視覚障害者と山登り
「トゲアザミに、ミツバチが止まってますよ」
「うわー、大きいギンバイソウ、触ってみる?」
これは、先月剣山へ「ポレポレ山楽会」の仲間と一緒に登った時のひとこまだ。「
ポレポレ」とは、スワヒリ語で「ゆっくりのんびり」という意味。視覚障害者とともに楽しむ登山の会である。
サポーターは、視覚障害者の前後に晴眼者が立ち、前の人のリュックにつけたロープを左手で持ち、動きを確かめながら歩くのである。後ろの人は「右上に木の枝が、左はがけです」と声を掛け、また、冒頭のように風景をはさみながら登るのである。
私も、視力が落ちてから山とはまるで縁がなかったが、この山楽会と出会って、登山靴を押し入れから十年ぶりに取り出した。もう二年になるが、徐々に体力もついてきた。
先月は三歳の娘と一緒に参加した。ある仲間は失明後、通風を患っていたが、症状が良くなり医師からも続けるように言われている。また、ある中途失明の男性は、「山に登るのは二十年ぶり。気持ちがいい」と、笑顔がこぼれる。これからも、このような声をたくさんつくっていきたい。
かく言う「ポレポレ」も、徐々に視覚障害者の参加が増え、慢性的なサポーター不足が悩みである。折しも、今秋には、障害者スポーツの祭典「よさこいピック」が開催される。
競技スポーツの向上とともに、障害のある人が広くスポーツを楽しめるよう、すそ野を広げていきたい。
Y・藤原 40代男性 (視覚障害:光覚)
- 前ページ『全盲になってからの山登り』へ < < |